農地のこと

各種農地の活用

一口に「農地」と言っても、都市計画や農業計画の位置づけによって、その「性格」が大きく違ってきます。
また、その違いは経済原理にのり、資産価値に姿を変え、税制となって跳ね返って来るなど、農地所有者を翻弄しています。時代背景により、人々の価値観も変わります。
誰もが農地所有者になれるわけではありません。手放すのは簡単なことですが、失われた農地は二度と元に返ることはありません。「農地」を「農地」として活用する。とても価値のあることだと、私たちは考えています。

市街化調整区域と市民農園

市街化調整区域の概要
都市計画法の定義としては、「市街化を抑制すべき区域」とされる。
この区域では、開発行為は原則として行わず、都市施設の整備も原則として行われない。つまり、新たに建築物を建てたり、増築することを極力抑える地域となる。ただし、一定規模までの農林水産業施設や、公的な施設、および公的機関による土地区画整理事業などによる整備等は可能である。既存建築物を除いては、全般的に農林水産業などの田園地帯とすることが企図されている。市街化区域と対をなす。

調整区域と市民農園
調整区域では隣接住戸も多く、この地域で市民農園を開設する場合は周辺農業者だけでなく、地域住民との調整も大事になってきます。またインフラが整備される前に農家住宅や分家住宅が建築されていったところも多く、無秩序な宅地形成による狭隘道路が多いのも特徴です。「地域住民」といっても、数代辿れば農家さんだったお宅だらけなので、近隣から農園利用者を集めるのは難しいかもしれません。もちろん地域差はあるのでケースバイケースで農園計画を立てることになります。

区画貸し農園

開設条件
《行政承認が必要》
①1区画1,000㎡以下
②相当数の貸付
③一般公募
④定型的な貸付
⑤営利を目的としない栽培

入園利用体験農園

開設条件
《行政承認不要》
①農業経営は自らが行う
②利用者は農作業の一部を行う為に入園
③利用者は入園料を支払う
④利用者は収穫物を購入する
⑤利用契約は1年以内

農園施設

設置可能施設
水供給施設:水道がおすすめ
道具置場:育苗ハウスの片隅に
堆肥置場:屋根が無いもの

農振農用地と市民農園

農業振興地域制度の概要

制度の目的
自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域について、その地域の整備に関し必要な施策を計画的に推進するための措置を講ずることにより、農業の健全な発展を図るとともに、国土資源の合理的な利用に寄与することを目的とする。

制度の仕組み
(1)農林水産大臣は、食料農業農村政策審議会の意見を聴いて農用地等の確保等に関する基本指針を策定する。
(2)都道府県知事は、農林水産大臣と協議し、基本指針に基づき農業振興地域整備基本方針を定め、これに基づき、都道府県知事は、 農業振興地域を指定する。
(3)指定を受けた市町村は、知事と協議し、農業振興地域整備計画を定める。

農業振興地域整備計画で定める事項等
ア 農用地利用計画
イ 農業生産基盤の整備開発計画
ウ 農用地等の保全計画
エ 規模拡大農用地等の効率的利用の促進計画
オ 農業近代化施設の整備計画
カ 農業を担うべき者の育成確保のための施設の整備計画
キ 農業従事者の安定的な就業の促進計画
ク 生活環境施設の整備計画
ケ 必要に応じ、イ~クにあわせて森林整備その他林業の振興との関連に関する事項
(4)農用地利用計画は、農用地等として利用すべき土地の区域(農用地区域)及びその区域内にある土地の農業上の用途区分を定める。

農用地区域に含める土地
ア 集団的農用地(10ha以上)
イ 農業生産基盤整備事業の対象地
ウ 土地改良施設用地
エ 農業用施設用地(2ha以上又はア、イに隣接するもの)
オ その他農業振興を図るため必要な土地
(5)国の直轄、補助事業及び融資事業による農業生産基盤整備事業等については、原則として農用地区域を対象として行われる。
(6)農用地区域内の土地については、その保全と有効利用を図るため、農地転用の制限、開発行為の制限等の措置がとられる。
(7)農用地等の確保等に関する基本指針及び農業振興地域整備基本方針に確保すべき農用地等の面積の目標を定め、農林水産大臣 は、毎年、都道府県の目標の達成状況を公表する。
(農林水産省HPより)

長々と記載されていますが、要約しますと、

STEP
国が「基本指針」を作る
STEP
県が「基本方針」を作る
STEP
市町村が具体的な「基本計画」を作り、農業上の用途区分を定める。この用途区分において「農用地」として定められてしまうと、余程なことがない限りその土地は農業以外に利用することができなくなります。

農用地と市民農園
上述したように、「農用地」とは農振地域内での用途区分で、一筆ごとに指定されます。あわせて土地改良事業が実施されているところも多く、効率的な農業生産が行えるよう配慮された地域といえます。そのような地域において市民農園は「農業に無知な素人の集まる場所」であり、「迷惑施設」として扱われがちです。農振農用地で市民農園を開設するのであれば、周辺農業者の迷惑にならないよう細心の注意が必要といえます。

 都市においては、野焼き・農薬・土埃・虫などの発生源でもある「農地」そのものが「迷惑施設」として認識されがちです。特に「農」との関わりが薄い都市住民から農地に対する理解を得るのはとても難しいことなのですが、市民農園は都市住民と農地をつなぐ重要な役割を担っています。周辺農業者に嫌われる存在ではなく、十分にその役割を発揮し、地域に調和した農園を目指しましょう。

市民農園と生産緑地制度

生産緑地地区
生産緑地地区は、市街化区域内にある農地等の緑地機能を活かし、計画的に保全することによって、公害や災害の防止に役立てるとともに良好な都市環境を形成しようとする都市計画上の制度です。
生産緑地地区として都市計画決定されている農地等は具体的には、下記のような取扱いになります。
農地としての土地利用が都市計画上位置づけられます。
農地として管理することが義務づけられ、農地以外の利用はできません。
生産緑地地区内では、建築や開発が原則として制限されています。農業を営むために必要な建築等の行為で生活環境の悪化をもたらすおそれのないものに限り市長の許可等を受け、行える場合があります。

買取り申出制度
生産緑地地区は農地等として管理することが義務づけられていますが土地所有者の権利救済の観点から次の場合、市長に対し買取り申出ができます。
1.生産緑地地区に指定されてから、30年を経過したとき
2.中心となって農業に従事している者が死亡したとき、または営農できなくなるような重大な故障が生じたとき

行為制限の解除
市長は申出日から1ヵ月以内に市もしくは地方公共団体等で買い取るかどうかの通知をします。買い取る場合は買い取りの相手方と、価格等の協議に入ります。
買い取らない場合は、他の農業従事者に斡旋します。 買い取り希望がある場合は、相手方と価格等の協議に入ります。
申出日から3ヵ月以内に買い取りがされず、所有権の移転が行われなかったときは、生産緑地地区内の行為の制限が解除され、住宅や事務所などの建築やその他の宅地造成ができるようになります。行為の制限が解除となった場合は、市長は、所有者に通知します。
※実態としては、自治体による買い取りはほとんど行われていないようです。

認められている農業用施設
1.農産物の生産集荷施設、農業生産資材の保管施設、市民農園に必要な施設
※ただし市長の許可が必要
2.90㎡未満の農業生産施設、簡易な農地造成 ※届出のみ

市民農園施設は許可案件のため、多少手間はかかりますが、物置(農具置き場)や仮設トイレ(下水接続しないタイプ)、休憩施設の設置が可能です。

営農できなくなるような重大な故障
両眼の失明、精神の著しい障害、神経系統機能の著しい障害、上下肢の喪失、両手・両足の指の喪失およびこれに準ずる著しい障害、1年以上の期間を要する入院及びその他の事由により農業に従事することができなくなる故障として市長が認定したもの(養護老人ホーム・特別養護老人ホームへの入所、著しい高齢となり運動能力が著しく低下した場合)

主たる従事者
1.その生産緑地地区の農業経営に欠くことのできない者(所有権または経営権を有する者)
2.農業経営の中で主要な働き手である者
3.小作人で農業経営の主要な働き手である者
※農業は家族を中心とした共同経営が多いため、主たる従事者は所有者だけでなく、他の働き手にも認められる可能性があります。(妻・子等)

生産緑地と相続税
生産緑地で市民農園を開設する前に考えておかねばならないことがあります。不謹慎ではありますが、万一、所有者様が亡くなられた際に、当該生産緑地を売却するのか、それとも維持するのかということです。固定資産税こそ農地課税の生産緑地ですが、市街地にあるため、その潜在的な資産価値は農地の比ではありません。そのため、いざ相続が発生した場合は桁違いの相続税が発生することになります。相続人が農業を継承するのであれば、相続税納税猶予というのが一般的でしょう。兼業農家相続であれば、入園利用方式農園を経営しつつ、納税猶予を申請するというのも手かもしれません。税金を抑えつつ、安定した収入が得られます。

生産緑地の売却
前段でも述べたように、主たる従事者の重篤故障や死亡により営農困難になって、生産緑地を手放したいときは市に対して買取申出をする必要があります。その際には所管の農業委員会から主たる従事者の証明を発行してもらいます。ところが、当該地で区画貸し農園を開設していた場合は、主に耕作していたのは「市民」であるため、所有者は主たる従事者に当たらないと判断する自治体が少なからず存在します。相続税の支払い原資を当該地の売却で賄うことができなくなってしまうので注意が必要です。(※1)

(※1) 買取申出の事例では相続税の更正処分に対する取消請求訴訟において「主たる従事者」の解釈が問題となった事例(名古屋地裁平成13年7月16日判決、判例タイムズ1091-224)
上記判例においては、「主たる従事者」の判断基準について、その者の死亡により、所有者となった相続人が質的又は量的に従前と異なる新た負担を余儀なくされるような場合には、当該被相続人は「主たる従事者」に該当すべきであると判断した上、この新たな負担とは単に労働力の提供という要素のみに限定されるべきではなく、資本その他の経営面における要素を総合的に考慮すべきであると判示しました。

宅地化農地と市民農園

宅地化農地
平成3年4月の生産緑地法の改正、平成3年度末での長期営農継続農地制度の廃止、平成4年度からの固定資産税等の課税の適正化等の措置により、三大都市圏の特定市における市街化区域内農地については、都市計画において保全する農地と宅地化農地とに区分されました。
生産緑地(=保全する農地)では固定資産税などが一般農地として課税される一方、生産緑地以外の農地(特定市街化区域農地=宅地化農地)では、固定資産税などが宅地並み課税となり、相続税の納税猶予の特例が適用除外とされました。
バブル景気では、都市農地は「存在」そのものが「罪」と言わんばかりでした。時代の要請を受けて、税制を軸に、市街地から農地を追いやろうとして、さまざまな施策が打ち出されたのは奇しくもバブルがはじけた後でした。20年も続いた?「失われた10年」の間に、少子化が急速に進行し、今また大きな転換期を迎えようとしています。都市農業振興法が制定され、今後、貴重な宅地化農地を保全する動きも加速していくものと思われます。

都市農業と市民農園
そもそも食料自給に主眼をおいてきた農業政策でしたが、今や農地の評価は他面的となり、どちらかというと「環境」に軸足がシフトしてきているように感じます。特に都市部にある宅地化農地の存在意義は「代替緑地」としての機能であると言っても過言ではないでしょう。何代にもわたる相続を経て、こま切れとなってしまった宅地化農地では生計を立てられるほどの規模で農業を営むのは困難になっています。「農地」を「農地」として活用するなら、市民農園がもっとも適していると言えるでしょう。

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